月刊「いのちのことば」表紙装画・エッセイ
日が沈んですぐあとに澄み渡る空は青く染まってゆく。今日一日に心を波立たせたものも、思いがけず心揺さぶられたことも、深い青の中に舞い降りて静かに溶け込んでゆく。一日の中で思ったことをすぐに言葉にしようとすると、本当の奥底の気持ちとは何か少し違ってしまうように思う。目の前に訪れた深く青いひとときは、日々の生活の中で積もり重なっている言葉にならない思いをそのままそっと抱え込んでくれるような気がします。
夕暮れにまだ見ぬ明日を期待して、その輝きの中に歩み進もう。そのように明日がいつでも希望に満ちたものに見えるかというと必ずしもそうではなく、苦しみや悲しみの内に不安や心配の尽きない心を抱えて、夕暮れの輝きを直視出来ない日もあります。むしろそういう日のほうが多いとも思えますが、日が沈んだあとのほんのわずかな深い青のひとときは揺れる心を落ち着かせてくれる気がするのです。今日から明日を緩やかにつなげてくれる、そんなかけがえのないひとときであるのかもしれません。そして青のひとときを経た思いからやがて言葉が導き出されるとき、日々の反射的なつぶやきとは違った心の奥底の思いに気付かされるのです。
新しい年の訪れはそれまでの日々を過去へと押し流してゆきます。希望は頑張れば作り出せる、というものでもありません。でも、一日一日を大切に、感謝をもって、その過去のひとつひとつに「ありがとう」と言えるとき、希望というものは見いだしてゆけるのではないかと思いました。
「昼はあなたのもの 夜もあなたのもの。あなたは月と太陽を備えられました。 あなたは、地のすべての境を定め 夏と冬とを造られました。」(詩篇74篇16節、17節 新改訳)
冬は空が特に澄み渡る季節です。青のひとときは、日々生き急いでしまう私たちに神様が与えて下さっている、ささやかな贈り物のように思えています。
(月刊「いのちのことば」2020年1月号掲載)